行事
茶の湯の行事暦
初釜から除夜釜まで、一年の茶の湯の行事。季節の茶事、流派の忌日、寺社の献茶や名高い茶会。日付は毎年の決まり方で書いている。流派や年で変わるものは、出かける前に主催の案内を確かめてほしい。
1月いま
大福茶おおぶくちゃ
毎年1月1日(元日)
元日に若水で点てる茶。辞書では、茶に梅干や山椒、昆布、黒豆などを入れて飲み、一年の悪いものを払い、縁起を祝うものとされる。村上天皇が疫病のとき茶を飲んで平癒した故事から「王服茶」とも書く。表千家の家元では、元日の早朝にくんだ若水と前年からの埋み火で釜をかけ、新年最初の儀式として大福茶を行う。裏千家では、元日に利休御祖堂で大福茶を行い、家元がみずから若水をくんで、点てた茶を利休像に供える。
初釜はつがま
1月(日取りは流派・各家で違う)
新年に初めて炉に釜をかけて行う茶事。新春に初めて開く茶会もいう。江戸時代には「茶湯始」「初茶湯」と呼び、「初釜」の名が使われ始めたのは明治30年代と考えられている。三千家の家元では、近年は1月上旬から中旬に京都で催し、そのあと東京などでも開く。表千家の家元の初釜は、もとは「稽古初め」だったという。裏千家の家元では、正月の茶を「初釜式」と言い慣わしてきた。2025年は三笠宮妃百合子殿下の薨去を受けて「今日庵稽古始め」として行い、2026年の報告も「今日庵稽古始め」の名である。
出典
- kotobank.jp/word/初釜-602301
- omotesenke.jp/chanoyu/7_9_4b.html
- omotesenke.jp/chanoyu/7_9_4c.html
- urasenke.or.jp/archives/textm/headq/soke/ichimo…
- urasenke.or.jp/soke-koyomi/64970.html
- urasenke.or.jp/info/91387.html
- urasenke.or.jp/soke-koyomi/92420.html
- urasenke.or.jp/soke-koyomi/114247.html
- mushakouji-senke.or.jp/info
- mushakouji-senke.or.jp/about
今宮戎神社 献茶祭いまみやえびすじんじゃ けんちゃさい
毎年1月8日
十日戎に先立つ、1月8日の献茶祭。今宮戎神社の1月の行事には、8日の献茶祭と舞楽奉納に続き、9日から11日の十日戎の例大祭が並ぶ。表千家の解説では、この日の献茶式を一年最初の献茶式としている。
西大寺 新春初釜大茶盛式さいだいじ しんしゅんはつがまおおちゃもりしき
毎年1月16日
西大寺の新春の大茶盛式で、会場は光明殿。寺の解説では、大茶盛は延応元年(1239)1月16日、叡尊が西大寺復興のお礼に鎮守の八幡神社へ献茶し、その余りの茶を民衆に振る舞ったことに由来する。大きな器で点てた同じ茶を、集まった人が「一味和合」の精神で助け合いながら、同じ茶碗で回し飲む。
夜咄よばなし
冬(表千家の用語集では、冬至に近いころから立春まで)
夜に行う茶事で、茶事七式の一つ。今日では冬に限られ、厳寒の趣が主題になる。表千家の用語集では、冬至に近い冬の夕刻に始め、立春までの間に夜長を楽しむ茶事とし、午後6時ごろから始める。表千家の解説は、柚子などをふんだんに使った懐石を、春までの寒さのなかの楽しみとしている。
2月いま
大炉だいろ
2月(裏千家)
裏千家だけのもので、2月の厳寒の時期にだけ開く大きな炉。ふつうの炉が一尺四寸(約42.4センチ)四方なのに対し、大炉は一尺八寸(約54.5センチ)四方ある。十一代の玄々斎が、田舎家の囲炉裏をもとに考案した。今日庵では、咄々斎の次の間の六畳に逆勝手で切られている。炭の熱や大振りの釜の湯気で部屋を暖め、皆で暖を分け合う風情を楽しむ。
北野天満宮 梅花祭野点大茶湯きたのてんまんぐう ばいかさいのだておおちゃのゆ
毎年2月25日
菅原道真の祥月命日に行う梅花祭の日に、梅の盛りの境内で催す野点。豊臣秀吉が北野で催した北野大茶湯の故事にちなみ、1952年に始まった。上七軒の芸舞妓が奉仕する。
利休居士毎歳忌りきゅうこじ まいさいき
例年2月28日(裏千家の行事報告では2024年・2026年とも)
利休の命日(旧暦2月28日)にちなみ、大徳寺聚光院で営む毎歳忌の法要。聚光院には利休の墓がある。裏千家の行事報告では、2月28日に家元が一碗を供え、聚光院の住職が導師となって経を読む。法要のあと参列者に一碗が出され、直心会が釜を懸けて茶席を設ける。
3月いま
釣釜つりがま
3月の彼岸から4月中旬ごろ(裏千家の説明。地域で幅があってよい)
天井の蛭釘から鎖で釜をつるす趣向。季語は春。裏千家の家元の答えでは、基本は3月の彼岸から4月中旬ごろまで行う。東風の吹く時季につるしておくと、わずかな風でも釜がゆっくり揺れ、春が近づくのを亭主も客も感じられるという。期間は地域によって幅があってよいとしている。
利休忌(表千家)りきゅうき
毎年3月27日(表千家の家元)
利休の忌日の行事。利休の祥月命日は旧暦2月28日で、表千家の家元ではひと月送りにして、新暦3月27日に行う。祖堂の利休居士像の扉を開き、残月亭では利休居士の画像を掛けて、家元がお茶湯をする。そのあと七事式の茶カブキや廻り花を行うのが習いである。
利休忌(裏千家)りきゅうき
毎年3月28日(裏千家)
利休の忌日の行事。裏千家では宗家三大忌の一つとして、3月28日に営む。近年は宗家の平成茶室で営み、家元がお茶湯の儀を行い、利休居士の画像の前に一碗が供えられる。参列者を代表する人が濃茶をいただき、手向けの七事式が行われる。
利休忌(武者小路千家)りきゅうき
2026年の案内では3月28日・6月28日・9月28日・12月12日(年により変わる)
武者小路千家官休庵の案内では、「利休忌」は千利休宗易居士の月忌の追善法要と追善茶会で、京都の大徳寺聚光院で営む。2026年は3月・6月・9月・12月の4回である。表千家の解説では、聚光院では毎月28日の利休の命日に三千家が輪番で月次法要を営み、表千家の当番は1・4・7・10月である。官休庵は、このほかに一翁忌にも追善法要と追善茶会を営むとしている。
大師会だいしかい
毎年春(2019年・2024年・2025年は3月下旬の2日間)
益田鈍翁が1896年、弘法大師の書を披露するため、大師の縁日の3月21日に開いた茶会に始まる。三渓園、畠山美術館、護国寺と会場を移し、1974年から根津美術館が引き継いで、毎年春に開いている。近年の報告では、茶会に先立って護国寺による弘法大師の法要が営まれる。表千家の用語集は、西の光悦会とともに数寄者の二大茶会としている。
4月いま
西大寺 春の大茶盛式さいだいじ はるのおおちゃもりしき
毎年4月の第2日曜日と、その前日の土曜日
西大寺の春の大茶盛式。茶碗も釜も茶筅も大型の道具を使い、集まった人が大きな茶碗を回して飲む。近年の案内では、本席は光明殿で、時刻を決めた回に分けて行い、各回とも定員になり次第しめきる。副席の抹茶席は、回ごとに茶道の流派の社中などが受け持つ。
建仁寺 四頭茶会けんにんじ よつがしらちゃかい
毎年4月20日
開山の栄西禅師の誕生日、4月20日に行う茶会。朝、方丈で栄西を偲ぶ法要が営まれ、続いて四頭茶礼が始まる。寺の解説では、起源は中国の南宋・元の時代の大寺院の茶礼で、日本には鎌倉時代に栄西が禅とともに伝えたとされる。天目台と天目茶碗を使い、客を貴人として扱う。2012年に京都市登録無形民俗文化財となった。
5月いま
炉塞ぎろふさぎ
5月初め(立夏のころ)
冬のあいだ使った炉をふさぎ、風炉に替えること。精選版日本国語大辞典は、陰暦3月の末日に炉をふさぎ、この日から風炉を用いるとする。表千家の用語集では、炉を使うのは11月はじめから5月はじめごろまで。表千家の家元では、立夏を境に炉から風炉に替える。
初風炉しょぶろ
5月初め、立夏のころ
表千家の用語集では、5月初旬に立夏を迎え、炉から風炉にかわった当初の初夏の茶の湯のよび名で、道具組みや懐石に初夏の趣向をこらす。表千家の家元では、立夏を境に炉から風炉に替える。炉の灰を上げるなど、替える支度には半日以上かかるという。
7月いま
精中鵬雲忌せいちゅうほううんき
毎年7月5日(裏千家)
裏千家の宗家三大忌の一つで、7月5日に営む。十一代の玄々斎精中と、十五代の鵬雲斎の遺徳を偲ぶ。これまでの名を改め、2026年から「精中鵬雲忌」として営む。鵬雲斎が玄々斎を深く尊敬し、同じく夏に亡くなったことによる。家元がお茶湯の儀を行い、手向けの七事式が行われる。
朝茶あさちゃ
夏の早朝(酷暑のころ)
夏の早朝に催す茶事で、茶事七式の一つ。早朝の涼しさを演出する。「朝の茶事」の略。表千家の用語集では、風炉の時期の酷暑のころ、午前6時ごろから始める。表千家の解説は、7月に葛焼や鱧を用いた朝茶で客を迎えたいと書いている。
八坂神社 献茶祭やさかじんじゃ けんちゃさい
毎年7月16日(祇園祭の期間中)
祇園祭の期間中、7月16日に八坂神社で行う献茶祭。祇園祭は7月1日から一月のあいだ続く。表千家の解説では、表千家と裏千家の家元が隔年で奉仕する。2026年の京都市の観光案内では、表千家家元の奉仕で、拝服席や副席、協賛席を設けるとしている。
8月いま
八朔はっさく
毎年8月1日(表千家の家元)
8月1日の八朔に、表千家の家元へ職家の人々が紋付の姿で挨拶に訪れる行事。松風楼で釜をかけて一服の茶を出し、そのあと新席で、家元が祝いの膳を振る舞う。表千家は代々紀州家に仕えたため、武家の行事が多く取り入れられているという。
9月いま
天然忌てんねんき
毎年9月13日(表千家の家元)
表千家中興の祖、7代如心斎の遺徳を偲ぶ行事。如心斎は七事式を制定した。家元の残月亭では如心斎筆の円相を掛けてお茶湯をし、そのあと且座、花寄せ、数茶や一二三の稽古をするのが習いである。
10月いま
宇治茶まつりうじちゃまつり
毎年10月の第1日曜日
栄西、明恵、千利休の三人の茶祖の遺徳をしのぶ祭り。豊臣秀吉が宇治橋の三の間から茶の水をくみ上げた故事にちなむ「名水汲み上げの儀」が宇治橋で行われ、興聖寺では茶壺口切りの儀などが営まれる。
名残の茶なごりのちゃ
10月中旬から下旬ごろ(裏千家の説明では10月中ごろから11月初め)
前年の口切から使ってきた茶壺の茶が残り少なくなり、その名残を惜しむ茶事。風炉から炉に移る少し前に催す。裏千家の説明では、道具も新しいものは使わず、控えめに組む。表千家の解説は、侘びた風情の道具に、小さく寂しい花や残花を合わせる例を挙げている。
中置なかおき
10月ごろ(風炉の季節の終わり、秋が深まるころ)
風炉を畳の中ほどに置く置き方。表千家の解説では、5月の初風炉のころは勝手付に置くが、秋が深まると畳の中心に置き、少しでも火を客に近づける心遣いという。裏千家の家元の答えでは、中置は名残の趣向で、四畳半以上の広間の席で行う。
11月いま
炉開きろびらき
11月初め、立冬のころ(10月の終わりから11月初め)
冬になって初めて炉を開くこと。茶の湯では10月の終わりから11月初めにかけて行う。表千家の用語集では、立冬を待って炉を開き、口切の茶のころと重なる開炉のころは、茶の湯の正月とも呼ばれる。利休は柚子の色づくころ、宗旦は吐く息が白く見えるころに炉を開くと言ったという。表千家の家元では、11月8日の稽古日から炉に替える。
亥の子いのこ
立冬の前後の亥の日
もとは旧暦10月の亥の日の祝い。表千家の解説では、宮中で亥の月の亥の日から炉に火を入れており、茶人も立冬の前後の亥の日に炉を開いて、亥子餅をいただくようになった。江戸時代には、この日から炬燵を開き、火鉢を出す習慣もあった。
口切くちきり
11月初め、炉開きのころ
初夏に摘んだ新茶を茶壺に詰めて封をし、半年ほど寝かせる。11月にその壺の封を切り、石臼で挽いて客にふるまう茶事。茶の湯の新年の行事で最も重んじられ、炉開きと重なるこの時期は、茶の湯の正月とされる。露地の垣の竹を青竹に替えて迎える。
西大寺 秋の大茶盛式さいだいじ あきのおおちゃもりしき
毎年11月の第1日曜日(2026年から。2025年は10月12日)
西大寺の秋の大茶盛式。春と同じく、大きな茶碗に点てた茶を、集まった人が回して飲む。寺の案内では、2026年から11月の第1日曜日に行う。2025年は10月12日だった。本席は光明殿で、各回とも定員になり次第しめきる。
二条城 市民大茶会にじょうじょう しみんだいちゃかい
秋(2026年は11月1日・3日・7日・8日。流派ごとに日が分かれる)
二条城の庭園、清流園で開く秋の恒例の茶会。表千家、藪内家、裏千家、武者小路千家の4流派が、日を分けて茶席を持つ。当日は茶席券を持つ人だけが清流園に入れる。2026年は第72回で、券は午前と午後に分けて売られた。
光悦会こうえつかい
11月(辞典では例年11月11日から13日)
本阿弥光悦の遺徳をしのぶ茶会。1915年(大正4)に発足し、洛北の鷹峯にある光悦寺で開かれる。辞典では、例年11月11日から13日までとされる。東京の大師会と並んで、東西を代表する大茶会とされ、東京、京都、大阪、名古屋、金沢の美術商が世話役を務める。
宗旦忌そうたんき
毎年11月19日(裏千家)
千宗旦の遺徳を偲ぶ、裏千家の宗家三大忌の一つ。11月19日に営む。宗旦は千家三代で、今日庵や又隠を建てて、裏千家の礎を築いた。家元がお茶湯の儀を行い、宗旦居士の画像に一碗が供えられる。
北野天満宮 御茶壷奉献祭・口切式きたのてんまんぐう おちゃつぼほうけんさい・くちきりしき
毎年11月26日
12月1日の献茶祭で使う碾茶を奉納する祭典。宇治など京都各地の碾茶を詰めた御茶壷を、産地ごとの唐櫃に収めて運ぶ。一の鳥居から本殿まで、茶摘み娘の先導で御茶壷行列が行われる。茶壷は神前に供えられ、そのあと口切式が行われる。
12月いま
北野天満宮 献茶祭きたのてんまんぐう けんちゃさい
毎年12月1日
豊臣秀吉が天正15年(1587)10月1日に催した北野大茶湯にちなむ祭典。11月26日に奉納した碾茶を石臼で挽いて使う。京都の藪内家、表千家、裏千家、武者小路千家、堀内家、久田家の4家元2宗匠が、6年ごとの輪番で奉仕する。献茶式のあと、境内の内外に茶席が設けられる。
事始めことはじめ
毎年12月13日
正月の準備を始める日。江戸時代の上方では、陰暦12月13日に行った。表千家の家元では毎年12月13日に、入門を望む人を迎える。入門する人は祖堂の利休像に参拝し、家元の方から八寸をいただいて、正式な入門となる。この日が年内の稽古じまいで、稽古場に「先今年無事 芽出度千秋楽」の掛物を掛ける。
除夜釜じょやがま
毎年12月31日(大晦日)
大晦日に掛ける釜。表千家の解説では、大晦日に除夜釜を掛ける人も多いという。表千家の家元では、年末の火が翌年に受け継がれるようにと、残月亭の炉に埋み火をして年を越す。裏千家の今日庵では、逆勝手出炉に炉が切られた溜精軒を、除夜釜に使う。