松風茶の湯の暦と銘

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道具の手引き

茶碗から炭道具まで、役目と形、見どころ、扱いの決まり。流派で違う所は裏千家を先に書き、表千家は分けて後ろに。裏千家の公式と辞典、博物館で確かめられたことだけ。50項目。

茶碗・茶筅・茶巾・帛紗

茶碗ちゃわん

抹茶を飲むための器。茶席で客がかならず手に触れる道具で、もっとも親しまれている道具の一つである。陶器や磁器が多く、絵付けをしたものもある。

平安時代の末から鎌倉時代には、中国の青磁せいじ・白磁や天目てんもくが使われた。室町時代の中ごろ、わび茶とともに高麗茶碗が主になり、千利休の時代には美濃みの・瀬戸せとの茶碗や楽茶碗が大きな位置をしめた。中国から来たものを唐物からもの、日本で焼いたものを和物わものまたは国焼くにやきという。

見どころの一つが高台こうだいである。茶碗の底についた台で、形はさまざまだ。

筒茶碗つつぢゃわん
筒形で底の深い茶碗。寒い時期の趣向に使う。裏千家では、筒茶碗は縁からでなく底から先に清める。
平茶碗ひらちゃわん
口が広く浅い茶碗。おもに夏、風炉の季節に使う。
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楽茶碗らくぢゃわん

楽焼の茶碗。楽焼は轆轤ろくろを使わず手捏ねてづくねで形を作り、低い温度で焼く陶器である。黒と赤の二種が多い。

天正年間(1573〜92)に、京都の長次郎ちょうじろうが千利休の指導で始めた。2代常慶が豊臣秀吉から「楽」の字の印を与えられ、楽を家号とした。長次郎ちょうじろうを祖とする楽家が、その伝統をおもに受け継いでいる。

千利休がわび茶にふさわしい茶碗として創りだしてから、茶の湯で大きな位置をしめるようになった。長次郎ちょうじろうの茶碗は利休のわび茶の象徴とされる。表千家には、利休が手もとで愛用したといわれる長次郎ちょうじろうの「禿かむろ」が伝わる。

黒楽くろらく
黒色不透明の釉うわぐすりをかけて焼いた楽焼。
赤楽あからく
素地に酸化鉄の粘土を塗って赤くし、透明の釉うわぐすりをかけて焼いた楽焼。

千利休

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高麗茶碗こうらいぢゃわん

朝鮮半島で焼かれた茶碗の総称。「高麗」は時代の名ではなく、当時の日本で朝鮮をそう呼んだことによる。多くは李朝りちょうの初めから中ごろの作である。

室町時代の末、わび茶の広がりとともに茶人に取り上げられ、桃山時代には茶の湯の茶碗の主流になった。初めは朝鮮の日用の器を茶碗に見立てたもので、のちには日本からの注文で焼かせた茶碗も入ってきた。

井戸茶碗いどぢゃわん
高麗茶碗の一つで、茶の湯の茶碗のなかでもっとも重んじられてきた。胴のろくろ目と、竹の節のような高台こうだいが特色。大井戸では、枇杷びわ色の釉うわぐすりと高台こうだいまわりの梅花皮かいらぎも特徴とされる。
三島手みしまで
灰色の素地きじに細かい文様を型押しし、白土を象眼ぞうがんして焼いたもの。文様を三島暦の仮名に見立てた名。
熊川茶碗こもがいぢゃわん
朝鮮の熊川の港から日本へ出されたための名とされる。高台こうだいが大きく、口の端が外へ反る。
御本茶碗ごほんぢゃわん
桃山から江戸時代に、日本から手本を送って朝鮮で焼かせた茶碗。
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天目茶碗てんもくぢゃわん

抹茶を飲むために、日本にもっとも古く伝わった中国の茶碗。鎌倉時代、中国浙江せっこう省の天目山の寺で学んだ僧が持ち帰ったことからの名とされる。

すり鉢形で、口のふちがわずかにくびれ、高台こうだいは低く小さい。天目台てんもくだいにのせて使った。福建省の建窯けんようで焼かれた建盞けんさんがもっとも名高く、曜変ようへん天目・油滴ゆてき天目などがある。瀬戸などでも写しが作られた。

珠光・紹鷗・利休と茶道の姿が見えだした時代に、道具は中国風から日本風へ変わっていった。天目茶碗も国焼くにやきの茶碗になった。

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茶筅ちゃせん

抹茶を点てるたてるための竹の道具。竹筒の半分以上を細く割って穂にし、その先を少し内に曲げる。穂の数によって数穂・中穂・荒穂などがある。流儀によって、使う竹の種類や形が違う。

裏千家では、茶筅はあらかじめ水屋みずやで穂先が折れていないかを確かめ、軽く水にくぐらせて茶碗に仕組む。点前の初めの茶筅通しちゃせんとおしは、席中の湯に茶筅をなじませるためのもので、いきなり強く振らない。客の前で穂先をもう一度確かめる意味もある。終わりの茶筅通しちゃせんとおしは水で行い、穂先についたお茶を落とすように振る。

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茶巾ちゃきん

茶碗をふく麻の布。点前のときは茶碗の中に仕組んでおく。かつては朝鮮の照布てりふを最上とし、今はおもに奈良晒布を用いる。

裏千家では、後炭ごずみ手前で濡れた茶巾で釜の蓋を清める。このとき蓋が動かないよう、摘みを軽く押さえる。

裏千家では、夏に平茶碗などに水を張って茶巾を入れ、涼しげな水の面を見せる洗い茶巾の点前がある。寒い時期に筒茶碗を使うときは、茶巾を絞って入れる絞り茶巾をすることがある。これは決まりではなく趣向である。

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帛紗ふくさ

点前で茶杓ちゃしゃくや茶器を清めるときに使う絹の布。茶碗などの器物を扱うときにも使う。大きさは縦9寸・横9寸5分(約27×29センチ)ほどで、生地は塩瀬しおぜが多い。

裏千家では、おもに男性は紫、女性は赤や朱を用いる。帛紗を腰につけていれば亭主ていしゅ側の目印になるが、客もかならず持参する。

今の形は千利休のころにでき、妻の宗恩そうおんの工夫によると伝える。裏千家の家元は、帛紗の四方を捌くことを、東西南北の方位と春夏秋冬の一年を清める意味だと答えている。

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古帛紗こぶくさ

お茶を出すときや、拝見する道具をのせるときに使う小さな帛紗。いろいろな紋様や織り方があり、裂きれを選ぶ楽しみがある。由緒ある織物で作り、本来は唐織からおりや緞子どんすなどの名物裂めいぶつぎれである。

裏千家では、茶碗荘で濃茶を出すとき、茶碗を古帛紗にのせる。名物や由緒のある茶碗に対する扱いで、楽茶碗でも同じである。客は自分の古帛紗にのせ替えず、そのままいただく。茶杓ちゃしゃく荘では、亭主ていしゅが茶杓ちゃしゃくを古帛紗にのせて拝見に出す。

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茶入・棗・茶杓

茶入ちゃいれ

濃茶こいちゃの抹茶を入れる焼物の器。濃茶こいちゃには主に茶入を、薄茶には主に塗物の薄茶器うすちゃきを使う。茶入は仕覆しふくという裂きれの袋に入れて席に出す。昔から茶人が大切にしてきた道具の一つである。

蓋は象牙ぞうげで、蓋の裏に金箔を貼る。裏千家の家元は、その由来として、象牙ぞうげは毒に近づけると割れるという中国の言い伝えと、金や銀の箔は毒気で色が変わるという文献の記述を挙げている。

見どころは、全体の姿と釉ゆうの調子のほか、口・肩・胴・腰・糸切いときりの五か所とされる。

唐物からもの
中国から渡ったもの。鎌倉時代末から室町時代にかけて特に大事にされた。
和物わもの
日本で作られたもの。瀬戸で唐物からもの茶入の写しが作られ始め、わび茶の大成とともに盛んに焼かれた。
肩衝かたつき
肩の部分が角ばった形の茶入。
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仕覆しふく

茶入や茶碗を納める袋。「仕服しふく」とも書く。茶入の仕覆には、金襴きんらんや緞子どんすなどの名物裂めいぶつぎれを使うことが多い。茶入が大事にされ、付属品も吟味されたので、仕覆に使う名物裂めいぶつぎれの製作もうながされた。

茶入の仕覆は、茶入・茶杓とともに客の拝見に出す。

裏千家の貴人点では、濃茶こいちゃの道具を拝見に出すとき、茶杓を仕覆の上に載せて出す。貴人のためだけに使った茶杓なので、畳にじかに置かないためである。

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棗なつめ

薄茶を入れる塗物の器。形が植物のナツメの実に似ることから名がついた。薄茶器うすちゃきの代表である。

黒塗りを主とし、蒔絵まきえで飾ったものや木地きじのものもある。室町時代の塗師ぬし、羽田五郎はねだごろうが始めたと伝わる。濃茶こいちゃ入を納める挽家ひきやから出たという説がある。

利休型の中棗が棗の標準とされる。わび茶が進むと、中棗を仕覆しふくに入れるなどして、陶製の濃茶こいちゃ入の代わりにも使った。

中棗
中くらいの大きさの棗。利休型の中棗が標準とされる。
平棗ひらなつめ
扁平な形の棗。直径が高さの約2倍ある。
紹鷗棗
棗の古い形とされる。大ぶりで、挽家ひきやに近い姿をしている。

千利休武野紹鷗

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薄茶器うすちゃき

薄茶を入れる器の総称。薄器ともいう。濃茶こいちゃの茶入は焼物、薄茶器は塗物が主である。「茶器」は薄茶器を指すほか、茶道具全体をいう場合もある。薄茶器と茶杓を合わせて両器と呼ぶ。

形は棗のほか、中次なかつぎ・雪吹ふぶき・頭切ずんぎりなどに分けられる。材料は塗物が多く、木地きじ・竹・一閑張いっかんばり・陶磁器・象牙ぞうげ・金属などもある。代々の茶人が好みの形を生み、種類が増えた。

中次なかつぎ
円筒形で、胴の中ほどに身と蓋の合わせ目がある。
雪吹ふぶき
中次なかつぎの一種で、肩と裾に面を取ったもの。茶の湯では「吹雪」でなく「雪吹ふぶき」と書く。
頭切ずんぎり
頭を一文字に断ち切った形。「寸切ずんぎり」とも書く。代表は金輪寺きんりんじ。
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茶杓ちゃしゃく

抹茶を茶入や棗からすくう道具。主に竹で作り、象牙ぞうげや、梅・松・桜などの木でも作る。竹の筒に納め、多くは銘めいがついている。

茶人がみずから削ったものが多く、好みや人柄がうかがえる。茶道具の中でも重んじられる。

初めは中国から伝わった象牙ぞうげの薬匙やくじを使った。裏千家の家元は、竹に変わったのは、侘茶が生まれる中で道具がみな日本風に変わった流れの一つだと説く。

表千家では、中ほどに節のある中節なかぶしの茶杓が基準とされる。竹の茶杓は家元の自作が多い。

珠徳形
村田珠光のころ、象牙ぞうげの茶杓をまねて作った節のない竹の茶杓。
止節とめぶし
切留きりどめに節を残した形。武野紹鷗が考えたとされる。
中節なかぶし
中ほどに節を置いた形。千利休が始めたと伝わり、基本の形として定着した。

村田珠光武野紹鷗千利休

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茶壺ちゃつぼ

葉茶を蓄え、運ぶための焼物の壺。初夏に摘んだ新茶を詰めておき、11月にその口の封を切って葉茶を臼で挽き、抹茶にする。この行事を口切くちきりの茶事という。

裏千家の家元は、前年5月に摘んだ葉茶を10月ごろまで茶壺で寝かせて熟成させると説く。網を外した壺を拝見するときは、掌を使わず両手の指先で扱う。中の葉茶に熱や湿気を呼ばないためである。

千利休の時代には、茶道具の中で最も大切にされた。茶壺を飾って拝見する習いもあり、表千家では「壺飾り」という。

千利休

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水指・建水・蓋置・柄杓

水指みずさし

点前に使う水を入れておく器。釜に足す水や、茶碗・茶筅ちゃせんをすすぐ水を入れる。材料はさまざまで、形も多い。

別の用途で作られた器を水指に見立てて使う楽しみもある。武野紹鷗が、井戸の水を汲む釣瓶つるべを水指に使ったのも、その一例とされる。わび茶が広まると信楽しがらきや備前びぜんなどの焼物も使われ、千宗旦せんのそうたんの好みで楽焼のものも作られた。

裏千家の葉蓋の点前は、玄々斎げんげんさいが七夕の趣向として、黒塗りの曲の受け筒を水指にし、梶の葉を蓋にしたのが始まりである。

武野紹鷗千宗旦玄々斎

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建水けんすい

茶碗をすすいだ後の湯や水を入れる器。「こぼし」ともいう。「建」は傾けて水をこぼす意味である。材料は唐銅からかねや砂張さはりなどの金属、焼物、木地曲きじまげなどの木のものがある。もとは台子だいすの皆具かいぐの一つで、唐銅からかねのものだった。

裏千家では、木地曲きじまげの建水は綴じ目を手前にして、中に蓋置と柄杓を仕組む。柄杓を蓋置に引いた後、内側の綴じ目が客付に向くように回して置き直す。客から見て、綴じ目の細工が景色になるようにするためである。

裏千家では、建水に茶碗を仕組む入子点のとき、清浄を第一にして新しい木地曲きじまげを使い、原則として塗物は使わない。

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蓋置ふたおき

釜の蓋や柄杓を置く道具。竹・焼物・金属のものがある。古くは台子だいすの皆具かいぐの一つで、中国の文房具を見立てたものが多かった。

裏千家の家元によると、竹の蓋置は、千利休が台子だいすの点前を侘びた小間の茶に変えたときに使い始めたもの。青竹は一回限りなので、油抜きして白くする。白い竹は使ううちに侘びた味が出る。自分で選んだ竹を趣向として使えるように、歴代の宗匠が花押を入れたものもある。

裏千家では、八代一燈いっとうより前は、炉と風炉で蓋置を分けなかった。表千家では、竹の蓋置を引切ひききりといい、節の高さで炉用と風炉用を分ける。

七種蓋置
火舎ほや・五徳ごとく・一閑人いっかんじん・三つ人形・蟹・栄螺さざえ・三つ葉の七つ。

千利休

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柄杓ひしゃく

釜や水指から湯や水を汲む竹の道具。合ごうと柄からなる。炉用・風炉用・差し通しさしとおしなどがあり、流儀によって形が違う。

裏千家の点前では、居前に座って柄杓を取り、「鏡柄杓」をする。一碗の茶を点てる前に、心と体の構えを整えるためである。御園棚の点前では、近い方の左手で柄杓を取る。

表千家の用語集では、柄の先が合ごうを貫いたものを「真の柄杓」、柄の先に合ごうを差したものを「月形」と呼び、ふだんは月形を使うとする。

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釜・炉と風炉・炭道具

釜かま

炉や風炉に掛けて湯を沸かす道具。茶席の中心となる道具の一つで、茶席を持つことを「釜を掛ける」という。ほとんどが鉄の鋳物である。

胴の左右に、鐶かんを通す耳の鐶付かんつきがある。基本の形を真形しんなりという。口・肩・鐶付かんつき・羽の形や胴の地紋じもんで、多くの種類に分かれる。

古くは筑前の芦屋あしやと下野の天明てんみょうが産地として知られた。室町時代の末からは、京都の三条釜座かまんざで京釜が作られた。

裏千家では、文字が鋳込まれた釜はその文字を正面にする。花押かおうだけなら花押かおうを手前にする。

芦屋釜あしやがま
筑前の芦屋あしやで作られた釜。真形しんなりが多く、滑らかな地肌と絵画のような地紋じもんが特色。江戸時代の初めに絶えた。
天明釜てんみょうがま
下野の天明てんみょうで作られた釜。地紋じもんの少ない荒い肌のものが多く、早くから羽のない釜が作られた。
京釜きょうがま
京都の三条釜座かまんざで作られた釜。武野紹鷗の釜師の西村道仁、千利休の釜師の辻与次郎らが出た。

武野紹鷗千利休

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炉ろ炉

茶室の畳を切って設ける炉。釜を掛けて湯を沸かす。大きさは一尺四寸(約42.4cm)四方で、この寸法は千利休のころに定まった。

村田珠光が囲炉裏いろりに着想を得て、畳の面より釜を低くする茶室の炉を考えたとされる。切る位置によって、隅炉・向切・台目切だいめぎり・出炉でろなどがある。

炉の季節は11月の炉開きろびらきから4月の末まで。裏千家では、茶事の炭手前を、炉のときは懐石の前にする。

村田珠光千利休

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風炉ふろ風炉

席に据え、炭を入れて釜を掛ける道具。5月の初風炉しょぶろから、11月の炉開きろびらきまで使う。材料は土・唐銅からかね・鉄などで、木や陶磁のものもある。

炉が茶室に取り入れられる15世紀までは、一年中、風炉で湯を沸かした。台子だいすに飾る唐銅からかねの風炉が古い形で、武野紹鷗の好みで土風炉どぶろが作られて和風になったとされる。

中の灰は灰形に整える。裏千家では、茶事の炭手前を、風炉のときは懐石の後にする。

土風炉どぶろ
土を焼いて作る風炉。奈良で作られたものを奈良風炉という。真・行・草では真とされる。
唐銅風炉
台子だいすの皆具かいぐの一つとして伝わった古い形。
鉄風炉
裏千家では、鉄風炉には赤の前土器かわらけを使う。やつれた侘びた風炉なので、侘びすぎないようにするためである。

武野紹鷗

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大炉だいろ炉

裏千家だけの炉。11代玄々斎げんげんさいが、田舎家の囲炉裏いろりをもとに考えた。普通の炉は一尺四寸四方だが、大炉だいろは一尺八寸(約54.5cm)四方ある。

宗家では咄々斎とつとつさいの次の間の六畳に、逆勝手ぎゃくがってで切られている。2月の厳寒のころだけ開く。炭の熱と大ぶりの釜の湯気で部屋を暖め、客にくつろいでもらうための炉である。

五徳ごとくは炉に向かって右手前寄りに据え、左向こうの隅に雪輪瓦を立てて灰を仕切る。炉縁は木地きじを使い、炉壇ろだんはねずみ色に仕上げる。

玄々斎

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炉縁ろぶち炉

炉のふちに取り付ける木の枠。囲炉裏いろりの木枠にあたり、畳を炉の火と熱から守る。

古い茶会記には炉縁の記載がない。釜が主で、炉縁は鑑賞するものではなかったためと考えられる。炉の寸法が千利休のころに一尺四寸と定まるまでは、柱や梁と同じく室内の木材の一部と見られていたらしい。

木地きじのものと塗りのものがある。広間にも炉が切られるようになって、塗りの框かまちの要素が取り入れられたとみられる。蒔絵まきえのものは時代が下る。裏千家の大炉だいろには木地きじの炉縁を使う。

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釣釜つりがま炉

炉の上に釣り下げて掛ける釜。炉の中に五徳ごとくは使わない。

裏千家では、天井の蛭釘ひるくぎから鎖で釣る。おおむね3月の彼岸から4月の中旬ごろに掛ける。東風こちの吹く時季で、かすかな風でも釜がゆっくり揺れる。その揺れで、春が近づくのを亭主と客が感じ合う。期間は地域によって違ってよいとされる。

表千家では、小間では竹の自在じざい、広間では鎖で釣る。

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透木すきぎ

五徳ごとくを使わずに、羽のある釜を炉や風炉に掛けるときに使う木片。釜の羽の下に置いてすき間を作り、風を通す。透木が無いと空気の流れが悪く、火が熾きにくい。

材は桐や朴ほおなどで、利休形は厚い朴ほおとされる。

透木は敷木しきぎが転じた語ともいわれる。永禄年間の茶会記には、すでに透木釜が広まっていたことが見える。裏千家の透木の後炭手前では、炭をつぎ終えてから透木を炉壇ろだんに戻す。

千利休

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五徳ごとく

炉や風炉の中に据えて、釜を載せる道具。鉄の輪に3本の脚を付けたものが多い。脚の先を平たく打って内側に曲げたところを爪つめという。

爪つめを上にし、輪を灰に埋めて使う方法は、茶道に始まったといわれる。

風炉では、五徳が考え出されて、武野紹鷗のころ奈良で土風炉どぶろが作られるようになった。五徳を据えて釜を掛ける口が、風炉の基本になった。

釣釜つりがまや透木釜のときは、炉の中に五徳を使わない。

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灰はい

炉や風炉の中に入れる灰。風炉の中の灰は灰形に整える。灰形を作ることは、茶人の修練の一つとされる。

裏千家では、茶事の風炉の初炭で、灰形に灰匙はいさじの先で月形を切る。この灰形でほかの客は迎えない、という一期一会いちごいちえの気持ちの印である。何席も続く大寄せの茶会では切らない。

裏千家では、炉には風炉のような厳格な灰形はないとする。炉の炭手前では、炉の中に湿し灰しめしばいをまいて清め、整える。

風炉灰ふろばい
風炉の中に入れる灰。
湿し灰しめしばい
炉の炭手前で炉中にまく灰。灰を番茶で練り、湿り気が残る程度まで乾かして作る。
藤灰ふじばい
藤の木を焼いて作るとされる灰。茶の湯などで使う。
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炭すみ

茶の湯で炉や風炉につぐ炭。茶の湯では、輪切りにしたクヌギの炭を使う。切り口に菊の花のような割れ目が出るので、菊炭きくずみという。

炉や風炉に最初に据えて芯にする炭を胴炭どうずみという。裏千家の大炉だいろの後炭では、客の中立の間に、輪胴・丸毬打・割毬打・丸管炭・割管炭・枝炭えだずみを荘っておく。

表千家では、点前に使う炭を道具炭といい、池田炭いけだずみや佐倉炭さくらずみなどを使う。炉用の炭は風炉用より総じて大ぶりとする。

胴炭どうずみ
炉や風炉に最初に据えて芯にする炭。
枝炭えだずみ
ツツジやクヌギの小枝を焼いた細い炭。火つきがよい。胡粉ごふんを塗った白炭しろずみと、塗らない山色やまいろがある。
菊炭きくずみ
輪切りにしたクヌギの炭。佐倉地方の佐倉炭さくらずみが良質で名高い。
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炭斗すみとり

炉や風炉に炭をつぐとき、炭を入れて席に持ち出す器。炭のほか、香合こうごう・羽箒はぼうき・鐶かん・火箸ひばしも一緒に入れて使う。茶道では烏府うふともよぶ。竹などで作ったものが多く、瓢ふくべや菜籠なかごも使う。

裏千家の大炉だいろの後炭では炭斗を使わない。節分の厄払いに使う炮烙に、湿し灰しめしばい・灰匙はいさじ・香・羽・鐶かん・火箸ひばし・組釜敷を仕組む。

表千家では、炉には大ぶりのもの、風炉には小ぶりで浅いものを使う。

瓢ふくべ
裏千家では、瓢ふくべの炭斗はおもに炉開きろびらきに使い、その年の瓢ふくべを切って用いるのが原則。宗家では、玄々斎が歌を書いた瓢ふくべを炉開きろびらきに用いる。
籠
表千家の用語集では、籐・竹・棕櫚皮しゅろがわ・蓮の茎などで編んだ籠がよく使われるとし、形は円・四角・五角・六角などがあるとする。

玄々斎

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炭道具

炭手前に使う道具。裏千家の茶道具入門は、炭斗に炭と一緒に入れて使うものとして、香合こうごう・羽箒はぼうき・鐶かん・火箸ひばしを挙げる。

香合こうごうは香を入れる小さな器である。香は風炉や炉の中でたく。

裏千家では、切掛風炉きりかけふろの初炭所望のとき、釜を上げて初掃きをした後、羽箒はぼうきを炭斗にのせてから客に炭を所望する。

表千家では、炭・火箸ひばし・鐶かん・釜敷かましき・香合こうごう・羽箒はぼうきを炭斗に組み入れる。初炭では、炭をついでから香をたく。

羽箒はぼうき
鳥の羽で作った小さなほうき。香道具にも使う。
火箸ひばし
炭をはさむ金属の箸。裏千家では、台子だいすや長板の総荘で杓立しゃくたてに荘り、点前の折には抜いて台子だいすと勝手付の間に置く。柄杓の扱いの差し支えにならないためである。
鐶かん
切れ目のある鉄の輪。釜の両の鐶付かんつきに差し入れ、釜を上げ下ろしする。
釜敷かましき
上げた釜を置くときに下に敷く。籐・竹・組み紐などを薄く平らに編んだものを使う。水屋用の薄板のものもある。
灰匙はいさじ
灰をすくって炉の中にまいたり、風炉の灰をならしたりする匙。多くは金属製。裏千家の大炉だいろでは、雪輪瓦の向こうに盛った湿し灰しめしばいに立てておき、陶器の灰匙を趣向として使える。
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灰器はいき

炭手前のとき、炉や風炉に使う灰を入れて持ち出す器。

ふつう炉用には素焼の大ぶりのもの、風炉用には釉薬のかかった小ぶりのものを使う。

裏千家では、切掛風炉きりかけふろの炭手前には灰器を使わない。初炭で香合こうごうが大きく香合こうごう台に載りにくいときは、香合こうごうを左手、灰器を右手に持って出る。灰器を膝前に仮に置き、香合こうごう、灰器の順に定座に置く。

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掛物・花入・香合

掛物かけもの

床の間に掛ける書や絵。裂きれや紙で表装ひょうそうし、「軸」「幅」ともいう。亭主ていしゅの思いや茶会の主題をあらわし、茶席でもっとも重要な役割をもつ。道具の取り合わせの中心でもある。

書には、禅語ぜんごを書いた一行物いちぎょうものや横物よこもの、和歌や発句ほっくを書いた懐紙かいし・短冊たんざく、昔の茶人などの手紙である消息しょうそくがある。絵も季節を感じさせるものを使い、額の絵を飾ることはめったにない。

室町時代の茶の湯では唐絵からえが多く掛けられた。千利休の時代には、禅僧の墨跡ぼくせきが重んじられるようになった。

一行物いちぎょうもの
文字を一行に書いた墨蹟ぼくせき。禅語ぜんごが書かれる。
画賛がさん
絵に字句を書き添えたもの。茶人らが書いたものが多い。
消息しょうそく
昔の茶人などが書いた手紙を掛物にしたもの。
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墨跡ぼくせき

禅僧の筆跡。日本では、中国と日本の禅の高僧が書いたものを特にこう呼ぶ。茶の湯では、大徳寺を中心とする高僧の書がことに大事にされる。

墨跡を床に掛けた早い例は、村田珠光むらたじゅこうが一休宗純いっきゅうそうじゅんから受けた圜悟克勤えんごこくごんの墨跡とされる。千利休は、茶の湯と禅を結ぶものとして、掛物のなかでも墨跡を重んじた。『南方録なんぽうろく』は「掛物ほど第一の道具はなし」と記し、墨跡を第一とする。

中身は、師が弟子に修行を終えた証として与えた印可状いんかじょう、号を授けた字号じごう、悟りの境地などを示した法語ほうごなどに分かれる。

村田珠光千利休

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花入はないれ

花を入れる器。床の間に掛けたり置いたりして使う。花ほど季節感が表れるものはない。花は人を招くときに気を配るものの一つで、それを入れる花入にも気を配る。

金属・焼物やきもの・竹・籠かごなど、さまざまな種類がある。珠光・紹鷗・利休と茶道の姿が見えだした時代に、花入も唐銅からかねから竹のものへ変わった。

裏千家の家元は、花を入れるときは、青竹の清らかなものを切り、清い水を張り、清い心で清い花を入れることが大切だと答えている。

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竹の花入たけのはないれ

竹で作る花入。竹の花入は千利休に始まると伝えられる。一重切「園城寺おんじょうじ」、二重切「夜長よなが」、尺八などが伝わる。

裏千家では、正月に結び柳を竹花入に入れる。今の形の結び柳は玄々斎からという。竹花入に水を入れると柳が芽吹いて床の間を濡らすので、水は入れない。

二重切の上の段に花を入れないときも、水は入れる。水は天から頂くもらい水で、貴いからだと裏千家の家元は答えている。

一重切いちじゅうぎり
竹の上部に節を置き、その中段に窓を一つ切ったもの。
二重切にじゅうぎり
二つの節の間それぞれに窓をあけ、水を溜める所を二か所つけたもの。利休が始めたとされる。
尺八しゃくはち
一重切りで、長さ1尺8寸、中ほどよりやや下に節をとったもの。利休作に始まる。
置筒おきづつ
釘穴がなく、据え置いて使う筒形の竹の花入。

千利休玄々斎

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香合こうごう

香を入れる蓋つきの小さな器。炭点前に使う炭道具の一つである。香は炉や風炉の中で焚き、香りを楽しむとともに清らかさを感じさせる。

裏千家では、風炉の季節には木地きじや塗物ぬりものの香合に白檀びゃくだんなどの香木こうぼくを入れ、炉の季節には陶磁器の香合に練香ねりこうを入れる。

炭手前を略すとき、香合を荘っておくことがある。裏千家の家元は、これを炭手前を省く亭主ていしゅの気持ちの表れだと答えている。また裏千家では、名物や由緒のある香合を炭斗すみとりに組まず盆にのせて持ち出すことがあり、これを盆香合という。初炭しょずみ手前に限る扱いである。

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棚・台子

台子だいす

点前の道具を飾る棚。天板と地板を四本の柱で支えるものが基本である。南浦紹明なんぽじょうみょうが中国から持ち帰ったと伝わるが、後世の伝承で真偽は確かめられない。棚物はこの台子をもとにしている。

裏千家の家元は、棚の根本は台子にあると答えている。台子の地板に風炉・釜・水指・杓立・建水・蓋置を置き、杓立には火箸と柄杓を入れる。これを総荘という。点茶盤でできる点前が初炭・後炭・濃茶・薄茶の四つに限られるのは、台子の総荘をそのまま立礼の形に写しているためだという。

表千家の用語集では、黒塗四本柱の真台子しんのだいすを正式とし、二本柱の及台子きゅうだいすを「行」、竹台子などを「草」の格とする。

真台子しんのだいす
黒漆塗の四本柱の台子。唐物の台子にあたる。
及台子きゅうだいす
四本柱を略して二本柱にした台子。台子より小さい。
竹台子たけだいす
桐の白木に竹の柱を四本立てた台子。
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長板ながいた

風炉や水指などをのせる長方形の板。台子の地板にあたる。大小の二つがあり、大きいほうを風炉に、小さいほうを炉に使う。

裏千家の家元は、普通の棚でも台子・長板に準じて湯返しをすると答えている。台子・長板の総荘で点前をするときは、杓立から火箸を抜いておく。柄杓の扱いに差し支えないようにするためという。

長板の二つ置の点前は、建水に柄杓と蓋置を仕組んで運び出す運びの点前である。そのため家元は、竹の蓋置でよく、花押かおうの入ったものが好ましいとする。

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棚物たなもの

道具畳に据えて、水指・茶入・薄茶器・香合・柄杓・蓋置などを飾る棚の総称。台子をもとにしたもので、袋棚・四方棚よほうだな・桑小卓くわこじょくなどがある。

裏千家の家元は、棚の根本は台子にあると答えている。棚を使う点前では湯返しをするが、地板のない棚や、畳にじかに水指を置く運びの点前ではしない。

裏千家の家元によれば、御園棚みそのだな・知新棚・春秋棚・和親棚などは、玄々斎の立礼の式を簡略にした立礼用の棚で、薄茶点前だけのものである。

表千家の用語集では、棚物は四畳半以上の広間の道具畳に据えるものとし、台子・長板などの大棚と小棚に分ける。

御園棚みそのだな
淡々斎の好み。本歌は裏千家の又新ゆうしんの立礼席に据えてある。
釘箱棚くぎばこたな
仙叟せんそうの好み。今日庵の無色軒むしきけんの点前畳の隅にある。
袋棚ふくろだな
志野棚にならって桐で作った棚。

玄々斎仙叟宗室

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皆具かいぐ

台子や長板に飾る茶道具の一式。辞典は風炉・釜・水指・杓立・建水・蓋置などを挙げる。

裏千家の家元は、棚に荘るとき蓋置を必ず扱って荘るのは、台子総荘の皆具の扱いが基本にあるからだと答えている。侘び茶が形づくられる中で、台子を外した点前になり、皆具も使わなくなっていったという。

令和4年の今日庵初釜式や令和7年の稽古始めでは、点前座の点茶盤に家元好みの皆具が据えられた。

表千家の用語集では、水指・杓立・建水・蓋置を同じ材質や文様で作ったものをいい、台子や長板に飾ることが多いとする。

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菓子器・懐石の道具

菓子器かしき

茶の湯の菓子を盛る器。主菓子を盛る主菓子器と、干菓子を盛る干菓子器がある。主菓子器には縁高ふちだか・食籠じきろう・鉢・銘々皿などがある。

裏千家の「お菓子について」によると、懐石の盛込鉢もりこみばちは、明治以降に始まった大寄せおおよせの茶会が盛んになるにつれ、主菓子用として薄茶の席で使われるようになった。色絵いろえなどの陶磁器の鉢が多く、黒文字くろもじの箸を添える。

裏千家の家元は、濃茶の貴人点では縁高ふちだかではなく高坏たかつきを使うと答えている。

高坏たかつき
足のついた器。菓子器としては主菓子にも干菓子にも使う。
銘々皿めいめいざら
縁高ふちだかを略したもので、近代になって使われるようになった。客一人ずつに出す。
振出ふりだし
携帯用の茶箱や茶籠に用いる、ごく小さな菓子器。
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縁高ふちだか

主菓子を盛る重箱形の器。縁を高く作った折敷おしきで、「縁高折敷おしき」の略という。五重を一組とし、蓋が一枚つく。

裏千家の「お菓子について」では、蓋の上に水で清めた黒文字くろもじを客の人数分のせる。客は黒文字くろもじ一本を使って菓子をいただく。

裏千家の家元によれば、縁高の本来の色は黒か朱で、蒔絵まきえや七宝透かしのある好み物もある。風炉の時期は清涼感を出すために縁高に露を打ち、炉の時期は打たない。

表千家では、五つ重ねの黒の真塗しんぬりを最も正式とし、一重に一つずつ菓子を入れる。

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食籠じきろう

蓋のある身の深い器。茶の湯では主菓子を盛る。形は円・四角・六角・八角などがあり、重ねて使うものもある。

漆器が多く、沈金ちんきん・彫漆ちょうしつ・螺鈿らでんで飾ったもののほか、黒漆塗や竹編み、陶磁器のものもある。中国の元・明の食籠は唐物からものとして大事にされ、『君台観左右帳記くんだいかんそうちょうき』には棚飾りとして図が載る。のちに茶の湯で菓子の器に使われるようになった。

表千家の用語集では、主菓子を入れ、蓋の上に黒文字くろもじを添えるとする。

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干菓子器ひがしき

干菓子を盛る器の総称。漆器・木地きじ・金属など、材質も形もさまざまである。

裏千家の「お菓子について」では、2〜3種の干菓子を客の人数より多めに盛って出す。客は手で取り、自分の懐紙かいしにのせていただく。

裏千家の家元は、薄茶の席で打ちものと有平糖あるへいとうを一種ずつ合わせて出すのは、目を楽しませる亭主の心入れだと答えている。

表千家の用語集では、漆器や木地きじのものが多く、唐銅からかね・南鐐なんりょうなどの金属器や陶磁器も用いるとする。

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黒文字くろもじ

菓子に添える楊枝ようじ。クスノキ科の黒文字という木の枝を削って作るので、この名がある。

裏千家では、用途によって長さの違うものを使う。縁高ふちだかでは、水で清めた黒文字を蓋の上に客の人数分のせ、客は一本を取って菓子をいただく。鉢に盛るときは黒文字の箸を添える。

精選版日本国語大辞典は、茶の湯で菓子に添える黒文字を長さ五寸九分(約18センチ)とする。表千家では、皮目に黒い斑点のある木を削り、6寸(約18センチ)のものを用いる。

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懐紙かいし

たたんで懐に入れておく紙。茶席では客が持参し、菓子をいただくときなどに使う。一般には美濃の手すき紙「小菊」を重ね、二つ折りにして使う。

裏千家の「茶道具入門」では、懐中かいちゅうするので男性用は大きく、女性用は小さい寸法とする。「薄茶のいただき方」では、飲み終えたあと飲み口を清めた指先を懐紙で清める。干菓子は手で取って自分の懐紙にのせる。

表千家では、濃茶の茶碗の飲み口をふくのにも使う。大小二種があり、大は男子のみ、小は男女ともに用いる。

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懐石家具かいせきかぐ

懐石に使う膳や椀の類。膳は足のない折敷おしきで、手前に飯椀と汁椀、向こうに向付をのせて出す。煮物椀にものわん・飯器はんき・湯桶ゆとう・八寸なども懐石の道具に入る。

黒塗の利休好みが基本で、朱塗や茶人の好みのものもある。煮物椀にものわんは、別に作ったやや華やかなものが多い。

裏千家の家元は、風炉の時期は清涼感を出すために懐石の膳や器に露を打ち、炉の時期は打たないと答えている。朱盃には季節を問わず露を打つ。

表千家の用語集は、利休形・利休好みを基準に、各流の宗匠の好み物が多いとする。

折敷おしき
足のない膳。懐石では飯椀・汁椀・向付をのせる。
煮物椀にものわん
椀盛りに使う、蓋のついた大ぶりの椀。懐石では普通は漆塗りを使う。
飯器はんき
飯を入れておく器。黒塗で浅い寸胴形の利休形が代表的。
利休箸りきゅうばし
両端が使える杉の箸。客の前に置く。

千利休

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向付むこうづけ

懐石の膳の向こう側に置く器。また、そこに盛る料理のこと。客から見て向こうに置くので、この名がある。

膳には手前に飯椀と汁椀、向こうに向付をのせて出す。一汁三菜の菜の一つで、懐石では膾なますを向付という。

器は陶磁器を使う。志野や楽焼にも向付がある。

表千家の用語集では、向付の菜は多くが魚の刺身で、時には鳥を使う。器は陶磁器が多く、種類はさまざまとする。

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八寸はっすん

懐石で酒の肴さかなをのせて出す、杉の木地きじの盆。8寸(約24センチ)四方で、縁がある。そこに盛った肴さかなのことも八寸という。

食事が済み、箸洗いはしあらいが出たあとに亭主が持ち出し、客に一人ずつ取り分ける。亭主と客が盃を交わすときの肴さかなである。肴さかなは動物性のものと植物性のものの二種を盛ることが多い。

表千家では、客が吸物をいただき終えたあとに出す。肴さかなの二種は海のもの・山のものとよび、客の数に亭主の分を加えて盛る。

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煙草盆たばこぼん

喫煙具一式をのせる器。タバコを吸うための炭火を入れる火入ひいれや、吸い殻を落とす灰吹はいふきなどを収める。

はじめは円や楕円の盆だったので、この名があるという。手提げのついたものや、引出しのついたものもある。灰吹はいふきは多くが竹で作られる。

裏千家の家元によると、茶事では待合・腰掛・薄茶のときに出し、薄茶の大寄せでは正客しょうきゃくの位置に置く。いまは「吸ってください」ではなく、「お気楽にどうぞ」という意味で置く。

表千家の用語集では、火入ひいれ・煙草入・灰吹はいふきをおさめ、煙管きせるを一対かける。待合や中立の腰掛に用意し、薄茶の席では正客しょうきゃくの前の畳の縁外へりそとに置く。濃茶の席では使わない。

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